今までの指導は間違っている?
こんにちは!
Noble Actionです!
皆さんは普段どのような指導を受けていますか?
本記事で紹介する内容の中には、一度は受けたことのある指導があると思います。
今回は、データを元にその指導が正しいかどうかを考えていきましょう!
【この記事でわかること】
1.目的に合わせたバット選びが重要!
2.バットを短くもっても、スイング速度やコントロールに差はない
3.ボールを「押し込む」というのは不可能
4.左打者は一塁までの到達タイムが短く、右打者の安打率の方が高い
【目次】
1.自分に合うバットとは
2.バットを短く持つ効果はあるのか
3.ボールを押し込むとは
4.実は右打者の方が有利!?
5.自分自身で判断しよう!
1.自分に合うバットとは
バットには、メーカーや長さ、重さ、材料など様々なものがあり、その中から自分に合ったバットを見つけるのは大変な作業です。
しかしながら、グローブやスパイクなども同様で、自分にあったものはプレーにもプラスの効果をもたらしてくれることは間違いありません。
打撃において、どのようなバットを使うかは重要であり、常に考えていなければならないポイントです。
それでは、自分にとって最適なバットとはどのようなバットなのでしょうか?
ここでバット選びのポイントになってくるのは、「振りやすさ」になります。
スイングしやすい、狙った位置にコントロールがしやすい、打球速度が最大化できるバットが最も合っているバットと考えられます。
しかし、この振りやすさとは抽象的なものであり、ヒトによって感覚は異なるので、一概にどれがいいというのは伝えにくいものです。
この振りやすさというのは、どのような要因が関係しているのでしょうか。
振りやすさには、「慣性モーメント」という力学の指標によって説明することができます。
今回は簡潔に説明する形になりますが、今後詳しく説明できる機会を設けたいと思います。
慣性モーメントとは、質量と回転の半径の距離から、その物体が回転しやすいか否かを表すことができます。
例えば、フィギュアスケートの選手が、スピンをするときに、足を開いているのと足を閉じているのでは、回転のしやすさ(慣性モーメント)が異なり、足を閉じている方が慣性モーメントが小さくなり、回転しやすくなります。
少し例がズレてしまいましたが、バットの質量が同じでも、バットの先に重心がある(慣性モーメントが大きくなる)方が扱いにくくなります。
また、慣性モーメントが大きいと、バットのスイング速度は低下するものの、打球速度は低下しにくいことも報告されています。
慣性モーメントが大きいバットは、筋力もより必要になるため、自分の体型も関係してくるかと思います。
バットの選び方として、目的をもってもいいかもしれません。
・振りやすさを重視=打率を高めたい場合(慣性モーメントの小さいバット)
・飛距離を重視=打球速度を高めたい場合(慣性モーメントの大きなバット)
選手の中には、重くて長いバットの方がスイングしやすいという選手もいるでしょう。
最初にも言ったように、バットのスイングの感覚には個人差もあるので、自分の感覚や目的に合わせて選択することが良いのではないでしょうか。
2.バットを短く持つ効果はあるのか
投手の球が速い場合や安打を狙う場合に、バットを短めに持つ選手を見かけます。
バットを短く持つことで期待できる効果として、スイングの軌道がコンパクトになり、ヒットの確率が上がることではないでしょうか。
実際に、バットを握る位置の違いによって、期待される効果は得られるのでしょうか。
結果として、明らかになっていることは、スイング速度やバットコントロールに大きな影響を及ぼさないということです。
これには、いろいろな考えがありますが、バットを短く持つことで、バットを軽く感じることができます。
これは、先程の慣性モーメントが関係し、バットの重心との距離が近くなることで、バットを軽く感じるためです。
慣性モーメントが小さくなることで、スイングしやすくなるのではないかと考えられますが、バットを短く持つと回転する距離が短くなるため、バットを加速しにくくなってしまう欠点があります。
そのため、一概にスイング速度が速くなるとは言えないのです。
また、バットコントロールについては、DeRenne et al.の研究によって、投球されたボールに対して、バットの持つ位置によって正確性には大きな差がなかったことが明らかになっています。
この要因に、バットを短く持つことで、コンパクトにスイングをしようとする動作につながってしまい、本来のスイングができていないことも考えられています。
バットを短く持っても、通常の持ち方と変わらないスイングができることで、よりコンパクトなスイングができる可能性はあります。
3.ボールを押し込むとは
これまでの指導の中で、「ボールを押し込む」、「インパクトの時に力を入れる」という言葉を耳にしてきたのでないでしょうか。
これは、その動作や意識によって、より強い打球につながるという風に感じていたからです。
これまでの研究において、ボールインパクト時のバットの振動がグリップ(手)に伝わるには、ボールにバットの力がほぼ全部伝わった後にくると報告されています。
言い換えると、当たったと感じたときには、すでにボールに力は伝わり切っているということです。
さらに、押し込むという言葉を考えると、インパクト後にボールを押し込むということは不可能となります。
それでは、なぜこの「押し込む」という考え方が浸透しているのでしょうか。
その要因として考えられることは、強い打球を打てた(バットの芯で捉えた)時は、バットから伝わる振動が少なく、バットを気持ちよく振りぬくことができるので、これを「バットを押す」という感覚と勘違いをしていることが挙げられます。
この勘違いが、「押し込めた」から打球が強くなった。となってしまったのではないでしょうか。
「押し込む」ように打ったとしても打球速度が大きくなるわけではない、ということに注意する必要があります。
「押し込む」ということを意識し過ぎて、スイングに力が入ってしまうことは、悪いスイングにつながってしまう可能性があります。
強い打球を打てた時がどのような感覚であったのかを感じることが大切なのではないでしょうか。
4.実は右打者の方が有利!?
野球に関するよく聞く定説として、「左打者は右打者よりも一塁に近いから有利」ということをよく聞きます。
確かに、一塁までの距離を考えると、右打者よりも左打者の方が近いことは間違いありません。
足の速さと一塁到達タイムの関係性について、左打者と右打者で比べてみましょう。
この時の足の速さとは、選手のプレーの中で走った最高速度を平均値化した値になります。
この図をみると、オレンジの点の右打者に比べ、青の点の左打者のほうが一塁到達タイムが早いことがわかります。
次は、選手の走力と内野安打との関係性を見ていきましょう。
この図をみると、足が速くなるほど、右打者の出塁率が上がることが分かります。
また、右左関係なく、走力が高いほど安打率が高くなることも分かります。
この図の2と3を考えると、どちらが良いのか分かりにくくなってしまいます。
なぜ、このような結果になったのか考えてみましょう。
右打者の安打率が高かった要因として考えられることは、打球方向です。
一般的に、右打者の打球方向は、サードの方向へ飛んでいくことが多くなります。
これによって、ファーストまでの距離が遠くなり、送球に時間がかかり結果としてアウトになりにくい可能性が挙げられます。
この打球方向を考えると、左打者では流し打ちをし、サードの方向へ打球することでさらに出塁率が向上すると考えられます。
この表を見ると、右打者では三遊間への打球が最も多いことが分かりますが、安打率をみると、打球方向で大きな差がないことが分かります。
一方の、左打者では一二塁間への打球が最も多く、安打率が低いことが分かります。三遊間では打球が少ないが、最も安打率が高いことが分かります。
このことから、左打者では三遊間の方への打球方向を増やすことが、安打率の向上につながると考えられます。
5.自分自身で判断しよう!
本記事の内容は、今までの指導内容とは異なっているものが多かったと思います。
最新のデータを参考にしている指導者は少なく、長年の指導を変えることは難しいと思います。
しかし、自分自身にとって、良いプレーはヒトそれぞれですので、最先端のデータを収集し、正しいか正しくないか判断することは今後の野球人生に必ず役立ちます。
本記事を読んでいただいた皆さんには、正しい知識をもとに練習をしていただきたいと思います。
引用・参考文献
- Baseball Geeks:一塁に近いから左打者のほうが有利であるというのは正しいのだろうか?(閲覧日:2022年9月7日)
- Baseball Geeks:ボールを押し込むと強い打球が打てるって本当?(閲覧日:2022年9月7日)
- Baseball Geeks:バットを短く持つとスイング速度は上がるのか!?理論で検証!(閲覧日:2022年9月7日)
- Baseball Geeks:球児必見!自分に最適なバットの選び方(閲覧日:2022年9月7日)
- DeRenne, C., Morgan, C.F., Escamilla, R.F., and Fleisig, G.S. (2010): A choke-up grip facilitates faster swing and stride times without compromising bat velocity and bat control. The Sport Journal, 13(2)
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